日本人が海外で働くために、一番にあげられる選択肢は、海外に進出している日本企業で働くことです。そうした日本企業での働き方には、大きく分けて「海外駐在」と「現地採用」の2つがあります。
とても簡単に言うと
海外駐在:日本本社で採用されて海外赴任。責任が重いが、給与などの待遇が良い
現地採用:現地の会社で直接採用。すぐに行きたい国に行けるが、待遇は良くない
この2つは、企業によって分け隔てがなくなってきています。しかし、いまだ待遇などに歴然とした差があるのも事実です。この記事では、これから海外で働こうと考えている方に、海外駐在と現地採用の違いを解説し、自分に合ったキャリア選択をするためのヒントをお伝えします。
私は海外駐在でインド、現地採用としてフィリピンで働いた経験があります。そうした経験から、両方のメリットとデメリットを説明していきます。
この記事を読んで分かること
・海外駐在と現地採用の働き方の違い
・それぞれの働き方のキャリアのつくり方
・自分に合った海外での働き方はどっち?
・それぞれの働き方の求人を見つける転職エージェント
*本記事にはプロモーションを含みます。
「海外駐在」と「現地採用」 の違い
「海外駐在」と「現地採用」では、主に1. 雇用主、2. 働く国と地域、3. 働くポジションと仕事内容、4. 給与、5. 福利厚生、6. 就職の難易度の6つに違いがあります。それぞれ説明していきます。
雇用主
海外駐在:日本本社
現地採用:海外各地の現地法人
海外駐在員
・日本企業の本社で採用され、会社の命を受けて海外に赴任する
・より責任ある仕事を任されることが多く、日本本社とのやりとりも多くなる
・海外ポジションのために採用されたとしても、一定期間日本で働いた後に海外に赴任するケースが多い
現地採用
・海外のグループ会社あるいは支社で直接採用される
・近年、特にアジア地域において駐在員よりも現地採用の採用枠が増えている
駐在員は日本本社で採用されるのに対し、現地採用は、各国の支社で採用されることになります。
働く国や地域
海外駐在:特定の国の枠で採用される場合があるが、基本的に選べない。任期と転勤がある。
現地採用:自分の希望で選べる。基本的に任期と転勤はない。
駐在員は、
・働く国や任期は会社方針や他のスタッフによるところが大きい
・それらの働く国、任期の希望は出せるが、希望通りにいくとは限らない
・1つの国に5-6年を超えて滞在するのは稀で、日本に戻るか他の国に転勤となる
一方の現地採用では
・特別な場合を除いて任期や転勤はない
・駐在員とは異なり、任期がないので、より長くその会社にいることができる
・しかし、キャリアチェンジやキャリアアップを求めて3〜4年で転職をする人が少なくない
現地採用では、働く国と任期、働き始めるタイミングを選べる一方、駐在員は会社方針によるところが大きいです。
>>参考記事 海外で働きたい日本人におすすめの国10選|働く国の選び方
働くポジションと仕事内容
海外駐在:現地スタッフのマネジメント、本社とのコミュニケーションが多くなる
現地採用:現地の日本人顧客の対応や駐在員のサポート役となることが多い
海外駐在の場合、
・管理職として、現地のスタッフをマネジメント、事業全体や部門を統括するポジションが多い
・日本本社と会議をしたり報告をしたりする場面がある
・管理職ではなく、技術職など特別なスキルを有して赴任されることもある
現地採用では、
・日本人でないとできない仕事を任されることが多い
・現地での日本人顧客の対応や駐在員のサポートなど
・管理職の場合もあるが、スタッフレベルのポジションの仕事も多い
海外駐在では、より責任のある仕事、ポジションを任される傾向にあります。一方の現地採用では、現地の日本人顧客対応、駐在員のサポート役となることが多いです。
給与
海外駐在:日本で勤務しているときより、高い給与が期待できる
現地採用:現地の外国人よりは高いが、駐在員より低くなる
海外駐在
・日本の同じ会社で働く場合より給与が高くなる
・基本給以外にも危険地手当など、給与がプラスされる場合もある
・現地通貨での給与に加えて、日本円でも給与をもらえるケースが多い
現地採用
・現地法人の給与体系に従って払われる
・とくにアジアでは、現地のスタッフより高い給与が支払われるケースが多い
・基本的に現地の通貨で支払われる
私は27歳のときに駐在員としてインドで働きましたが、給与は日本で働いていたときと比較し、手取りで約1.5倍に増えました。一方、30〜34歳まで現地採用でフィリピンで働いた際には、そのインドでもらっていた給与の6-7割程度になりました。
参考記事>> 【公開】フィリピン現地採用1か月の給料と生活費
福利厚生
海外駐在:給与以外の待遇も非常に恵まれている
現地採用:海外現地法人の規定に準ずる。駐在員と大きな差がある
海外駐在員は給与が高いだけでなく、福利厚生も充実します。給与のほかに期待できる福利厚生にはこちらのようなものがあります。
・子どもの学校費用
・一時帰国費用
・赴任時と日本帰国の引っ越し費用
・(場所によって)危険地手当
・(場所によって)車とドライバー
・現地での(日本語サポートを含む)保険
こうした待遇を含めると、自由に使えるお金は、日本で同じ会社で働く場合の2倍以上になるケースが多いです。
一方の現地採用の場合では、
・現地法人の会社規定による
・上記の海外駐在員がもらえる手当は期待できない
・日本の国民健康保険や国民年金などは、自分で支払う必要がある
こちらを見ていただくと、海外駐在員と現地採用の待遇の差が歴然としていることが、分かっていただけると思います。給与だけでなく、家賃補助や保険なども考慮すると、自由に使えるお金は2〜4倍もの差がつくことも珍しくありません。
就職の難易度
海外駐在:スキルと経験が求められる上、ポジションが限られ、入社が難しい
現地採用:ポジションが多く、比較的簡単
海外駐在
・海外駐在のポジションが限られている
・語学力や経験、スキルが求められる
現地採用
・語学の能力や経験が限られていても、すぐに就けるポジションがある
・とくにアジア地域において、現地採用の枠が増えている
海外駐在の方がポジションが限られている上、企業からの要望が高いため、就職難易度が高いと言えます。一方、現地採用は、とくにアジアでのポジションが多く、比較的簡単に就職ができます。
どちらを選ぶ?海外駐在 or 現地採用
雇用主、待遇、仕事内容、就職の難易度別に、海外駐在と現地採用の違いを説明してきました。改めて、そうした違いを、メリット・デメリット別にまとめ、どんな人が海外駐在、どんな人が現地採用に合っているか解説します。
海外駐在と現地採用のそれぞれのメリット・デメリット
海外駐在員のメリット
・収入が増え、福利厚生も充実することから、自由に使えるお金が増える
・日本帰国後に昇進、別の国への転勤などのチャンスもつかめる可能性が高まる
海外駐在員のデメリット
・中途採用での海外駐在枠が限られており、就職難易度が高い
・自分で行きたい国、任期を選べないケースが多い
・海外に赴任するまで、日本で一定期間働かなければならない場合が多い
・海外に行ってからより責任ある仕事を任され、苦労するケースもある
現地採用のメリット
・自分で行きたい国を選べ、すぐに働き始められる
・就職の難易度も比較的低く、経験やスキル、語学能力が限られても就けるポジションも
・キャリアを自分でつくることができる
現地採用のデメリット
・給与と福利厚生、待遇が相対的に低い
・同じ会社内でのキャリアアップが難しい
こうしたメリットとデメリットを踏まえて、海外駐在が合っている人、現地採用が合っている人は、どんな風に言えるでしょうか。次に説明していきます。
海外駐在が合っている人、現地採用が合っている人
海外駐在が合っている人
・より良い待遇で働きたい
・家族がいて、一緒に海外で生活したい
・より責任がある仕事をしたい
・海外で働きたいが、特定の働きたい国はない
現地採用が合っている人
・特定の国で働きたい
・仕事以外にやりたいことがある
・今すぐに海外に行きたい
・社会人経験が浅いが、海外で働きたい
海外駐在と現地採用の違いについて、より理解を深めていただくことができたと思います。
どちらも選択肢があるなら、海外駐在がおすすめ
ここまで見てきた通り、海外駐在と現地採用には、とくに給与と福利厚生に大きな差があります。海外駐在と現地採用、どちらの選択肢もあるのであれば、私は海外駐在を選ぶことをおすすめします。
海外駐在の方が、より責任のある仕事を任される場合が多いですが、仕事内容や職場環境などは、一概には言えません。現地採用であっても、駐在員と同様の仕事をしなければならない場合もありますし、駐在員であっても、仕事は比較的楽、という場合もあると思います。より良い待遇である駐在員を選んだ方が良いと思います。
一方、今すぐ海外に行きたい、仕事以外にやりたい趣味がある、駐在員の枠で採用は難しそうだ、といった場合には、現地採用として入社することが良いと思います。
参考記事>> 現地採用の憂うつ|4年働いたフィリピンの日系企業を辞める理由
海外で働くための求人は転職サイトや転職エージェントで探す
海外駐在あるいは現地採用として海外で働くための求人を見つけられる転職エージェントをご紹介します。現地採用と海外駐在のどちらの求人も扱っているエージェントもありますが、多くのエージェントはどちらかに偏っています。駐在員ポジションを多く扱っているエージェント、現地採用枠の多いエージェント、それぞれ紹介します。
海外駐在の求人を見つけられる転職エージェント
地域に偏りがなく、下記の転職エージェントで世界各国の求人を扱っています。現地採用ではなく、海外駐在のポジションに興味があるという方は、こちらの転職エージェントに登録して転職活動をすることをおすすめします。
転職エージェントの登録はいずれも無料で、非公開の求人が多い上、エージェントによって求人が異なる場合も多いので、複数のエージェントに登録してみることをおすすめします。
現地採用の求人を見つけられる転職エージェント
海外駐在ポジションを見つけられる転職エージェントと異なり、現地採用の職を取り扱う転職エージェントは、地域ごとに分かれています。地域ごとにいくつかの転職エージェントをご紹介します。
アジア:
パソナグループ, カモメアジア転職, RGF HR Agent, リラコーエンなど
北米:
QUICK USA, Actus, Leverages Career, 人材カナダなど
ヨーロッパ:
Spring転職エージェント, Career Management, エスハポン広場など
現地採用枠を扱う転職エージェント、転職サイトでは、より多くの仕事が公開されており、検索して見つけることができます。まずはどんな仕事があるか見てみたいという方は、こうしたウェブサイトで検索してみることをおすすめします。
転職エージェントに登録することで、海外就職に詳しいコンサルタントの方に相談できたり、非公開の求人を紹介してもらえたりすることができます。
駐在員でも現地採用でも、キャリアは自分でつくるもの
私は海外駐在と現地採用、どちらも経験しました。現地採用の際には、自分が駐在員と変わらない仕事をしているのにもかかわらず、給与や待遇が大きく違うことに腹立つこともありました。一方で、限られた給与や待遇だったからこそ、副業を始め、次のキャリアをどうするか考えざるを得なかったと思います。
海外駐在員として働いていた際には、キャリアや働くチャンスは会社が用意してくれるもの、と思っていた節がありました。しかし、今では、キャリアや働くチャンスは自分でつくるものと思っています。
1つの会社に勤め上げるキャリアは、時代にそぐわなくなっています。現地採用であろうと駐在員だろうと、変化を恐れず、一度きりの人生を楽しむべく、自分のキャリアは自分でつくっていく、そんな気概が必要なんだと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。みなさまのキャリアの成功を祈っています。