現地採用の憂うつ|4年働いたフィリピンの日系企業を辞める理由

2019年にフィリピンの日系企業に入社。そこから4年。退社し、フィリピンを去ることを決めました。

この記事では、私が退職し、フィリピンを去ることを決断した理由、今後の予定などについて書いていきます。フィリピン現地採用で働いた1人の退職理由、今後の予定に過ぎませんが、私が経験し、感じていることは、他の現地採用経験者の方々にも当てはまる部分が多いと思います。

現地採用として働いている方の今後のキャリア、あるいは、これから海外現地採用にチャレンジしてみたいと思っている方のミスマッチを防ぐためなどに参考になる記事になるはずです。

この記事を読んで分かること
・フィリピン現地採用経験者が感じた憂うつ
・フィリピン現地採用経験者が思う、海外だからこそ積めた経験
・フィリピン現地採用経験者の今後のキャリアの展望

 

フィリピン現地採用の選択

2019年2月、私フィリピン・マニラのとある日本企業に入社しました。

入社前までのキャリアについてはこちらの記事で詳しく書いていますが、日本での仕事のやり方に嫌気がさし、海外で働くことを決めました。

当時、日本の会社を辞めた際に、日本での働き方についてネガティブに思っていたことがこちらです。

日本での働き方についてネガティブに思っていたこと
・行き帰りの満員電車や会社での人間関係への配慮など、仕事以外の部分に疲弊する
・職務範囲がせまく、裁量権が小さい。やっている仕事が面白くない
・ミスや失敗に対する許容度が小さく、やってみないと分からないことも進まない
・社員の年齢層が高く、昇進や裁量権を得るまでに長い時間がかかる
日本の会社を退社後、ヨーロッパへの旅行と友人のスタートアップの立ち上げを手伝います。フィリピンで友人のスタートアップ立ち上げを手伝っていた頃、前職の上司がフィリピンに転勤しており、久々に再会することになり、そこで入社の誘いを受けました。
迷いもありましたが、以下のような理由で入社を決めることにしました。
フィリピン・マニラの前職と同じ会社で働くことに決めた理由
・海外、とくに成長著しいアジアの国で働きたかった
・営業とマーケティングを経験し、マーケティング職に就きたかった
・チームを率いることになり、初めての経験を積めると感じた
・前職の上司はインドで勤務時の上司であり、関係がとても良かった
・海外でのキャリアを再スタートするのに会社やサービスを知っているのはプラスだと思った
・給与は下がるが、副業しながらであれば、十分に生活可能だと感じた
こうして、偶然にも日本で働いていた会社のフィリピン支社に入社することになりました。

参考記事>> 6年勤めた大企業を辞めてフィリピンで働く理由

 

フィリピンの日系企業での経験

フィリピンの日系企業で働いた4年間、仕事での経験を簡単にまとめます。

職場での主な役割・仕事
1年目to B商材を扱うマーケティング部門のAssistant Managerとして入社。3つのプロダクトを担当。部下が2人。
営業が売りやすくなるよう、資料やデモ機の準備、情報を適宜共有することから開始。担当プロダクトの1つでマーケットシェア1位を獲得。
2年目コロナによって在宅ワークが中心に。Digital Marketing組織の立ち上げをリード。
ウェビナーやメールマーケティングなどで顧客とのタッチポイントを拡大。会社のアジア地域でBest Development Awardを獲得。
3年目Managerに昇進。Digital Marketingの活動領域を拡大。
マーケティングオートメーションの導入とクロスセルを目的としたメールマーケティングを実施。
4年目Senior Managerに昇進。担当領域が増え、部下も10人に増え、自分が手を動かすより、マネジメント業務が増える。
担当製品の1つでマーケットシェア1位を獲得。

入社した当初は、日本の会社では当たり前にある情報や資源などがないことに驚きました。商品を顧客に説明するための資料やデモ機などが例です。まずは、そうした営業の販売支援に時間をかけました。次元が低いかもしれませんが、そうした当たり前のことをできるようになることで、売上の数字は改善し、組織の結束は高まっていきました。

日本人は数人のみの組織なので、業務は英語でやっていました。英語力があるに越したことはありませんが、英語力が全てではありません。仕事への責任感や細かい点への配慮、数字の簡単な分析などは、日本人が得意とする分野であり、東南アジアでは強みとなるケースが多いと感じています。

 

どうして辞めることに?

上記のような仕事をしており、充実もしていたのですが、徐々に辞めることを意識し、半年ほど考えた上で、退職することを決めました。私が辞めることを決めた理由を挙げていくと、こういうことになります。

退社し、フィリピンを去ることに決めた理由
・4年半のフィリピン生活・仕事経験でフィリピン生活に満足したこと
・どうしても駐在員との待遇の差が気になってしまう
・取り扱っていた製品・サービスに飽きてしまった
・今後のキャリアに不安を感じたこと
・特にコロナ以降、体調が良くないことが増えた
・フリーランスとしてより自由に、自立して働きたい

昇進し、少しずつ仕事の景色も変わっていました。一緒に働くチームのメンバーにも恵まれ、楽しく、成果を出すことができていました。しかし、上述のネガティブな面と新しいことにチャレンジしたいという思いから、退社を決めました。

以下に、もう少し詳しく説明をしていきます。

フィリピンに4年半。生活・仕事に対する満足感

2018年後半からフィリピンに滞在し、4年半フィリピンに滞在しました。もともと飽き性ということもありますが、フィリピンでの生活・仕事に満足し、フィリピンにい続けるよりも、ほかの国に行ってみたいと思うようになりました。

みなさんも経験があると思いますが、初めての国に旅行や出張で行って、人々の行動や習慣など、日本との違いや共通点を見つけることは楽しいことだと思います。さらに、生活して見えてくるその国の人や文化の規則・原則を発見するのはさらに面白いことです。私にとって、1週間の旅行よりも1ヶ月の滞在の方が、より興味深いです。4年半のフィリピン生活と仕事で、そうした驚きや新鮮さに出会う機会はほとんどなくなっていました。

 

駐在員との待遇の差。やっぱり気になる

現地採用ですが、給与などの待遇にはそれなりに満足していました。しかし、同じような仕事をしている駐在員が、自分の2倍近くの給与をもらい、住まいが提供され、ドライバーもつくのを見ていると、不満に思うことは当然あります。

とくに、上司の日本人が代わってから仕事量が増え、自由度も減り、現地採用で駐在員と待遇に大きな違いがあることの不満が強くなりました。

多くの日本企業では、駐在員と現地採用とで待遇が大きく異なり、それについて不満を感じる現地採用の方は多いと思います。実際、現地採用のキャリアを調査した論文や転職エージェントの調査でも、待遇への不満が現地採用の方々の退職理由の1つになっているようです。

参考記事>>【海外で働く】どちらが良い?「海外駐在」か「現地採用」か

 

取り扱う商品・サービスへの飽き

日本で働いていた会社と同じ会社に入社したこともあり、トータルで10年同じ会社に勤めました。働く国や部門、ポジションなどが変わることで、仕事で見える景色は変わります。しかし、基本的に扱っている商材・サービスは同じであり、保守的な会社の文化にもだんだんと飽きてきました。人口が増え、GDPが伸びているフィリピンであっても、成熟している産業であるため、業界としての成長率は限られていました。

コロナウイルスの拡大にともなってデジタルマーケティングの業務領域を拡大したこと、副業でウェブ広告やSEOなどの仕事をしていたこともあり、そうした分野により興味をもつようになっていました。

 

今後のキャリアへの不安

4つめに、このままここで働いていると、本来積むべき経験が積めなくなるのでは?という不安感をもったことです。20代後半からのマネジメント経験や英語を使って働く経験は、日本では簡単には積めない貴重な経験だと思います。一方で、成長余地が限られる成熟した業界で働いていること、フィリピンでの「粗い」仕事のやり方が、今後のキャリアをせばめてしまうのでは?という不安がありました。

また、同じ国の同じ会社で働き続けるより、別の会社で結果を出す方が、良いキャリアを積めるのではないか、と思いました。

 

体調の問題

コロナウイルスの感染拡大により行動制限がかかった2020年3月以降、体調を崩すことが増えました。頭痛や消化器系の不調です。はっきりした原因は分かりませんが、外出や余暇の時間が減り、それまで以上に仕事をし、スクリーンの前で過ごす時間が増えたためだと考えています。

仕事が好きで、現地でもそれほど友人をつくらず、土日も副業などをしていたため、会社外でも毎月50〜100時間程度仕事をしていました。

幸い、大きな病気にかかりませんでしたが、辞めるまで体調の問題は残りました。海外にいることで1人の時間を長くもてるメリットは大きいですが、日本で家族や友人に会いやすい環境の方が良いように思えてきました。

本当に不思議なもので、辞表を出してから、体調は良くなりました。

 

 

個人事業主としてやってみたい

会社で組織のために働くよりも、自分自身で自立して働きたいという思いも退社を後押ししました。

個人事業主でやってみたいと思うようになった理由
・自分自身のまわりに起業している友人が多く、魅力的に見えた
・TwitterやYouTubeなどでフリーランスの方々の発信から自分もやってみたいと思っていた
・副業でやっているマーケティング業務にある程度自信をもちはじめた
・現地採用と駐在員の待遇の差に対する不満が高まっていた
・コロナ明けで会社イベントが多くなり、それらの活動に費やす時間に不満をもっていた

こうした理由から、会社勤めよりもフリーランスとして働く方に強くひかれていました。

 

以上が、現地採用を辞めて、フィリピンを去ることに決めた理由です。
辞表を出してから上司・社長と話し合い、退職が3ヶ月伸びましたが、最終的に辞めることになりました。

 

 

それでも日本ではできない経験が積めた

辞めるに至った理由を書いてきましたが、フィリピンでの仕事・生活はネガティブなことばかりではありませんでした。むしろ、ポジティブなことの方がが多かったです。誤解がないよう、プラス面も説明しておきたいです。日本で働き続けていたら経験できなかったこと、これからの自分のキャリアで武器になると感じる部分も多く、フィリピンでの就労機会に感謝しています。

フィリピン、現地採用だからこそ経験できたこと、ボジティブな経験
・20代後半からマネジメント経験を積むことができた
・英語を使って仕事をすることができた
・孤独だが自由な海外生活
・現地採用で経済的に恵まれてないからこそ、副業ができた

 

 

20代後半からマネジメント経験を積むことができた

平均年齢が高い日本では、ベンチャー企業などを除いて、30〜40代にならないと役職に就くことはないと思います。その点、フィリピンは社会全体として年齢が若く、職場でも20代が中心です。そうした環境で、自分もチームを率いて仕事をすることになりました。

初めての部下は、始業時間が8時半であるにもかかわらず、週3日は12時過ぎに出社してきました。気が強くももろいところがあり、接するのに気を遣いました。

個人としてではなく、チームとして成果を出すこと。チームの成長を感じること。組織として進むべき道を示しながらも、楽しく仕事をしてもらえるようにすること。1人の社員として働いているだけでは、考えもしなかったことを考え、感じることができました。

 

英語を使って外国人と仕事をする経験

英語を使って4年間仕事をしたことも、この先のキャリアで武器になると感じています。これまでオンライン英会話や留学など、さまざまなやり方で英語を学んできましたが、やはり実践することで最も英語の運用能力が上がることを感じました。とくに、プレゼンテーションやミーティングのために準備をすることは最も良い英語のトレーニングの機会になったと思います。

ミーティングをリードしたり、人前でプレゼンテーションしたり、そうしたことは4年前にはできないことでした。まだまだ足りない部分もありますが、英語では働く自信がつきました。

 

孤独だが自由な海外生活

私はこれまで、インドとオーストラリアに暮らしたことがありますが、海外での1人暮らしは孤独です。とくに私の場合は、現地で日本人の友人をあまりつくらないこともあり、孤独を感じる場面が多かったです。

孤独は寂しさなどのネガティブな面が想起されると思いますが、自分と向き合い、考えて言語化するのに良い時間だと感じます。これまでの自分の海外生活を振り返っても、孤独は自分の価値観や感情、目標などをより良く理解し、言語化するのに役立つ時間になってきました。

自分の好きなように時間を使えることも海外1人暮らしの良さです。日本で生活していると、たとえ1人暮らしであっても、家族や親戚、職場、友人などの人間関係で、断れない予定が入ってしまうことがあります。そうした人間関係や活動がプラスになることももちろんありますが、なかなか断れず、時間をとられてしまうことがあります。

海外にいると、「海外にいるから」という理由で罪悪感なく断ることができ、自由時間が増えます。

 

 

現地採用で経済的に恵まれてないからこそ、副業をすることに

最後に、現地採用として海外で働いたからこそのメリットです。

フィリピンの日系企業からもらっていた給与は、現地で生活するのに問題ありませんでした。それは、安いフィリピン料理を食べたり、中心地から離れた場所に住んだり、ということではなく、日本食の外食をしたり、マニラの中心地にほど近いところ住んだりするのにも十分な額でした。

一方、海外旅行を楽しんだり、貯金をしたり、ということを考えると、十分な金額ではありませんでした。1人の時間が長かったこともあり、自分のキャリアや将来について考えることもあり、副業をするようになりました。

駐在員であれば、おそらくその待遇に満足し、副業をすることはなかったと思います。現地採用だったからこそ、自分のキャリアについてより考え、副業で本業とは違ったスキルを身につけることができたと思っています。

 

以上が4年間のフィリピン生活、現地採用だからこそ得た経験です。辞めてフィリピンから去ることになりましたが、この4年間の仕事、生活に満足しています。

 

参考記事>>【体験談】海外で働くメリット・デメリット30選|海外で働きたい方へ
参考記事>>【2023年版】フィリピンの仕事が見つかる転職エージェント13選

 

 

今後の予定

フィリピンの日系企業を退社し、フィリピンから去る今後ですが、日本に帰国し、フリーランスとして活動していく予定です。

ありがたいことに、辞める前に、日本やシンガポールのグループ会社からお誘いもいただきましたが、現時点ではより自由に、自分の力を試したいと思い、フリーランスの道を選ぶことにしました。副業として続けてきたマーケティング業務を続けながら、プロジェクトベースでマーケティング業務を請け負っていくつもりです。

フリーランスをキャリアの最後まで続けられるかどうかわかりませんし、また会社に戻って働く可能性だってあると思います。ただ、今の時点ではフリーランスとして働くことに最も興味があり、チャレンジしてみたい気持ちです。また、どこかのタイミングでフリーランスとして働くキャリアについて紹介できればと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。みなさまのキャリアでの成功を願っています。